日本建築学会がクラブハウスの保存を要望
クラブハウス保存についての日本建築学会の要望を紹介します。
これは会の活動の反映です。三井不動産は最初の説明会で、「老朽化した建物」と説明しました。私たちが貴重な建造物と知ったのは、2月に区内で行われた「まち博」にパネル写真を出展して、これを見た人の懐古話がきっかけでした。
4月に視察にこられた都市計画審議会の大原委員は、「これは白い船を模してオープンスペースを大海原に見立てていますね」と評されました。これを契機に出版物を調べ、ビラで知らせ、区議会に保存を陳情。都市計画審議会委員に要請もしてきました。これを受けて、都計審委員の法政大学・陣内教授(建築学会理事)がご尽力くださいました。三井不動産がどう応えるか、見識が問われます。
■日本建築学会がクラブハウスの保存を要望
日本建築学会(会長=村上周三・慶応大学理工学部教授、会員3万6千人)は12月26日、岩沙弘道三井不動産社長と山田宏杉並区長に、三井グランドのクラブハウス保存を会長名で要望しました。要約を紹介します。(詳細は同学会のホームページで検索できます)
岩沙社長 宛
久米権九郎(1895年~1965年)に設計を依頼したのは、学習院の2年先輩である三井八郎右衛門高公で、戦前の日本の近代建築において傑作と位置づけられる建物です。竣工時から現在まで大幅な改修もなく、今後も末永く利用してゆくことが十分可能な建物であるとともに、使い続けることによって更にその地域の歴史的価値・文化的価値を高めてゆくことが間違いなく可能な建物と考えられます。
貴下におかれましては、この貴重な建物の持つ高い文化的意義と歴史的価値についてあらためてご理解いただき、このかけがえのない文化遺産が永く後世に継承されますよう、格別のご配慮を賜りたくお願い申し上げる次第です。
山田区長 宛
上高井戸という場所は、三井財閥の高邁な哲学を反映した運動場とともにその歴史を歩むことで、今日までその豊かな地域環境を保持してきた稀有な場所と言えます。同クラブハウスはこの地域の歴史を象徴する建物と見ることができます。
今後も使い続けることによって更にこの地域の歴史的価値・文化的価値を高めてゆくことが間違いなく可能な建物と考えられます。貴下におかれましては、この貴重な建物の持つ高い文化的意義と歴史的価値についてあらためてご理解いただき、かけがえのない文化遺産が永く後世に継承されますよう、地域行政の立場から格別のご配慮を賜りたくお願い申し上げる次第です。
三井上高井戸運動場クラブハウスについての見解
社団法人 日本建築学会 建築歴史・意匠委員会委員長 吉田鋼市
建物の構造形式は鉄筋コンクリート造、半地下1階・地上2階建てで、屋根全面を陸屋根(屋上庭園)とし、白い無装飾の壁面と四角い窓を持った近代主義的なデザインの建物であり、その意匠は端的に言って瀟洒・軽快である。久米権九郎はドイツやイギリスで建築を学び、1929年(昭和4年)に帰国。やがて1932年(昭和7年)に久米建築事務所(現・株式会社久米設計)を開設した。同クラブハウスは独立後まもない時期の作品である。
久米権九郎の初期の建築作品は現存例が少なく、また戦前の作品は木造和風(軽井沢万平ホテル:1936年)も含めてデザインが多様であったことから、同クラブハウスのモダンなデザインは久米の初期の作品の中でも貴重なものといえる。また、その設計内容においてクラブハウスおよび社員の厚生施設という用途を満たしつつ、その用途に相応しいカジュアルな性格を近代主義の設計手法で表現することに成功した点において、戦前の日本の近代建築の中でも傑作として位置づけることができる。