声 明
三井グランドの「地区計画」決定強行に抗議する
杉並区都市計画審議会(黒川洸会長)は、11月30日、第一種低層住居専用地域から第一種中高層住居専用地域へ用途地域を変更し、高さを20mに緩和することを中心とした「高井戸東1丁目地区・地区計画」(三井グランドの住宅開発計画)の決定を強行した。これは、広域避難場所をめぐる有効面積の資料不備をはじめ、計画の根幹をなす部分のあいまいさを残したままの決定である点でも、直前の公告縦覧で寄せられた6,500人余(1回目)、8,100人余(2回目)の反対意見、取り分け5000人近くの杉並区民の反対意見書を一顧だにせず、また半数の審議委員の「時期尚早」「継続審議を」の意見をねじ伏せる会長の強引な議事運営による決定である点でも、許すことができない暴挙である。付帯条件や要望事項についても、「文書確認」の強い意見も無視して口頭確認とし、無記名投票を強行するなど、なりふり構わぬ姿勢も許すことができない。
都会に残された貴重な自然を守ることをはじめ、浜田山・高井戸地域の住環境を守り、「住民参加のまちづくり」をめざして努力してきた私たちは、多くの地域住民・区民とともに、この暴挙に強く抗議するとともに、その撤回を求めるものである。以下、審議等のなかで明らかになった疑義や問題点を指摘し、納得と合意のもとにすすめられるよう、再審議を強く要求するものである。
一、「地区計画」の第一目標である「避難場所としての機能を確保」について
区が説明する「一人あたり1.1㎡」の避難有効面積の確保は、都の部局が「計画が不明確な現時点での算定は無理」とし、算定可能な柏の宮公園等についても、区側が正確な資料を提出しないままでとても審議できる「地区計画案」といえないことが、石川幹子委員の質問で明らかになった。付帯条件の「1.1㎡の担保のための事業者との協定締結・住民への情報公開」は、決定を容認するための言い逃れといわざるを得ない。
二、高度制限緩和について
この点での意見書が、賛成10筆に対し反対が8,101筆ということで明らかなように、住民の圧倒的多数が「反対」の強い意思を示している。土地所有権者だけの「一人地区計画」であることを理由に高度20mを認めることは、地域の調和・維持をはかる「地区計画」の本旨に反する。「三井の森を含む緑地等の区への提供の見返りとして、用途地域の変更と高度制限緩和」とする区の態度は、三井不動産の事情だけをしん酌した、地域無視・住民無視の行政といわざるを得ない。
三、補助215号線について
数十年前に計画された都市計画道路の見直しが社会問題化しているなか、その用をなさないことを事実上認めながら、平成16年の見直しで「必要」とされたとして、補助215号線を地区内だけに計画することは極めて説得力に乏しい。しかも、住民から見直しを求める検討会の設置の要望が出され、協議の必要性があるにもかかわらず、「検討会不設置」を建設課長が即断して押し通したことは、民主主義のルールに反するものである(石川委員が指摘)。
四、外周の並木保全について
区は都市緑地法による協定を結ぶとしたが、協定の内容も明示されないままでは何ら担保にならない。「協定の次の所有者への引き継ぎ」が付帯事項についたが、管理組合による協定の遵守は空手形になる恐れがある。樹高20mものケヤキ並木が3.5m幅の空地で末長く保全できるかどうか疑問である。地区計画の目標に「緑の保全」を掲げていることを鑑みれば、植生の調査を踏まえた、並木の保全に必要な空地の公的管理こそ優先すべきである。
五、クラブハウスと前面のオープンスペースの保存について
建築史家の陣内秀信委員や建築計画専門の大原一興委員から、再三にわたって保存の重要性が指摘された。区は、耐震上からも経済的にも保存できないという三井不動産の説明を前提として、記録にとどめざるをえないと繰り返した。DOKOMOMO(ドコモモ=近代建築の保存をすすめる国際組織)や日本建築学会の要望に対して極めて消極的な姿勢は、保存の意義を口にする資格はない。「オープンスペースを含めた保存」が審議会の要望事項とされたが、各界の異例の要望と併せ、真摯な再検討こそ必要である。
六、周辺の生活環境整備について
工事に関しては、要望事項で「事業者と区の窓口設置」が確認されたが、工事だけでなく、駅南口開設問題や狭あいな道路問題、踏み切りの混雑緩和策、ホームの混雑回避策をはじめ、「地区計画」による周辺の住環境・生活環境悪化への対策は、すべて先送りされた。これらが未解決なままの区画整理事業、建築申請・建築確認は絶対許されない。
七、「まちづくり」における住民参加の手法をめぐって
村上美奈子委員が指摘されたように、区による「地区計画」が「まちづくり専門部会」を通らないまますすめられることになれば、今回のような「一人地区計画」は、まったく住民参加の手だてがないまますすめられることになる。これでは、住環境をはじめ交通・教育環境・災害対策など、周辺住民の意向を無視したままの開発の横行を許すことになる。この住民参加の仕組みの不備が審議会の大方の意向であることを踏まえ、その整備を明確にしないままでの決定を認めることはできない。
今回の「地区計画」決定の強行は、これら諸問題と、まだ解明されていない課題をすべて覆い隠したまま、三井不動産の利益だけを最優先したものである。
私たちは、この暴挙が不当なものであり、杉並区政にあってはならないものであることを広く区民に知らせるとともに、付帯条件や要望事項の実施状況・取扱い等を厳重に監視していく。また、引き続きあらゆる手だてを尽くして、住民合意のまちづくりと地域の住環境・緑・住民の命と安全を守るために努力していくことを、ここに決意する。
2005年12月1日 三井グランドと森を守る会