BPO(放送倫理・番組向上機構)に審理要請
テレビ東京「出没!アド街ック天国」(10月18日)浜田山編が放映され、三井グランドに建設中の「パークシティ浜田山」が人気スポット1位に。「人気の井の頭線沿線を揺るがす大事件勃発!あこがれのあの街に来春巨大な住宅地が誕生するのです!」とナレーションが入り、モデルルームや販売価格を紹介、三井不動産のコマーシャルかと思わせる内容に、守る会にも多くの住民から疑問の声が寄せられました。また、週刊朝日(11月7日号)にも「アド街ック天国に地元が大ブーイング 浜田山1位はなぜか造成中の住宅開発」と特集が組まれ、大きな反響をよびました。
地元住民の抗議の声を受け、「浜田山・三井グランド環境裁判」原告団は、2度にわたりテレビ東京宛てに「放映意図に対する抗議と質問状」「訂正・取り消し放送要請と再質問の申し入れ」を送付。「浜田山の街の景観・環境を破壊し、裁判中のマンションを1位として放映した意図・制作経緯」などを明らかにするよう求めましたが、「制作過程に問題はなく、訂正または取消しの放送は必要ない」として「質問への回答は差し控えさせていただく」と回答。テレビ東京側が、要請や質問に取り合わないという姿勢に終始したため、「浜田山・三井グランド環境裁判」原告団代表と斎藤驍弁護団長連名で、12月16日付けでNHKと民法でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)理事長、同機構放送倫理検証委員会委員長宛て「貴委員会における審理のお願いについて(要請)」を送付しました(別記)。
記者会見に12社。朝日、東京新聞、共同通信社などで報道
要請と同時に、12月16日、弁護士会館で記者会見を開催。主要新聞社など12社が取材。公正中立を旨とするマスコミのあり方を問う会見に関心が集まりました。
17日、朝日新聞朝刊には、「アド街」1位は係争中のマンション。浜田山の反対住民、BPOに検証要請」の見出しをつけ、「原告団の代表らは、広域避難場所がなくなり生活環境が悪化するなどとして行政訴訟を起こしていることに触れず、マンションの宣伝に終始し、娯楽番組とはいえ、不適切だった」と述べたことを報道。
東京新聞は、「係争に触れず紹介 不適切」の見出しに「番組の制作過程をなどを調査・検討するよう求めている」と掲載し、共同通信も全国加盟社に配信しました(写真は記者会見で配った資料)。
放送倫理・番組向上機構
理事長 飽戸 弘 殿
同機構放送倫理検証委員会
委員長 川端 和治 殿
2008年12月16日
「浜田山・三井グランド環境裁判原告団」代表 由井玲子・福田睦子・野口ひろ子
同裁判訴訟代理人・弁護団団長・斎藤驍
貴委員会における審理のお願いについて(要請)
日頃より視聴者の基本的人権の擁護と正確な放送、放送倫理の高揚を通じて、放送番組の向上にご尽力いただいていることに敬意を表します。
私たちは、テレビ東京が2008年10月18日に放送した「出没!アド街ック天国」について、貴委員会において、十二分に審理いただき、適切な対処をお願いするものです。それは、私たちが下記のように判断するからです。
(1)当該番組は、多くの視聴者に、一企業の建設中のマンションの宣伝番組と受けとめられた異様な内容であり、娯楽番組とはいえ、放送番組として不適切であり、地域住民をはじめ多くの視聴者へ誤った情報提供を行う結果を招くものであったこと。
(2)しかも当該マンション建設が、その用地の区画整理事業認可について現在行政訴訟で係争中であることは取材過程で当然認知できる状況であったにもかかわらず、番組上ではそのことに一切触れず、番組制作の公正性を著しく損なうものであったこと。
(3)また、このことに対する私たちの二度にわたる質問や訂正・取消放送の要請に対して、テレビ東京はまともに対応することなく、「制作過程の問題は無く」「内容に誤りは無い」と繰り返し、質問にも一切答えず、その姿勢は視聴者への対応の点でも放送倫理に欠けるものであること。
以下、私たちが申し立てに至る経過と当該地域と係争中の裁判の経過、そして当該番組の問題点と私たちの意見、審理いただきたいことを略記いたします。
当該番組とこの間の私たちに対する局の対応は、単に当該番組だけの問題だけでなく、局の番組制作姿勢、社会的責任にも関わる問題をはらんでいると考えます。私たちは、貴委員会が、放送への視聴者と国民の信頼を回復するため、当該番組の企画・調査・制作・放送・視聴者への対応の全過程について、調査・検証し、その判断を示されることを、重ねて要請します。
1.申し立てに至る経過
(1)2008年10月18日の当該番組放送後、地域の視聴者をはじめ、建設中のマンションのことを知っている視聴者から、「あの放送はなんなのだ。コマーシャルなのか」とか「開発業者からいくら出ているのか」といった声が続出。商店街の店主の間でも、「異様だね」「どうやってランキングを決めたのか」といった疑問も出され、これらの声を受けて、私たちは10月22日、テレビ東京社長 嶋田昌幸社長宛に質問書を送付した。
(2)10月29日付で、テレビ東京太田哲夫制作局長名で返答があったが、「業者等からの資金提供を受けた事実はない」という的はずれなことを強調するだけで、質問や疑問を受けつけないという態度で終始するものであった。
(3)11月10日、放送の正しい発展を願う立場から、問題を明確にするために、テレビ東京嶋田昌幸社長他三名宛に「訂正・取消放送要請と再質問の申し入れ」を行った。
(4)11月20日付で、テレビ東京太田哲夫制作局長名で返答があったが、番組企画の趣旨を述べた上で、取材過程で「パークシティ浜田山」が来春完成するとの情報を得て、番組構成を決めたとし、「制作過程において、弊社または番組スタッフが、三井不動産株式会社を含む利害関係者から何らかの要請や圧力を受けたということは無く、また、これら利害関係者から何らかの資金提供を受けたとの事実も一切ございません。」と述べ、制作過程に問題はなく、内容に誤りはないという認識から、「訂正または取消の放送は必要ない」として、そのため「質問への回答は控えさせていただきたい」と、重要な事柄には口を閉ざしたまま、黙殺するものであった。
(5)以上の通り、テレビ東京の対応は、要請や質問に取り合わないという姿勢に終始しているため、これ以上、テレビ東京とのやりとりをしても、問題ははっきりしないと判断し、今般、貴委員会における審理を要請するに至ったものである。
2.地域の概要と当該裁判の経過
(1)当該番組が対象とした浜田山地域は、1933年、わが国ではじめての都市緑地として指定されて以来、第二次大戦後の戦後復興都市計画にも緑地として位置づけられてきた。戦前から三井グランドをはじめ、興銀・新日鐵などの広大なグラウンドを配し、住宅開発が進むなかでも一貫して第一種住居専用地域として指定され、緑豊かな閑静な住宅地を形成してきた。1969年に旧都市計画法によって、23区内の緑地1万ヘクタールを解除して宅地開発を推進したあとも、三井グランドを含む神田川流域を中心とした杉並区南部470ヘクタールは、土地区画整理事業地区指定され、緑地を維持し、杉並区の生活環境・景観を守り、熱汚染を抑止する上で重要な役割を果たしてきた。井の頭公園から神田川沿いに並ぶNHKグラウンド、大蔵省・郵政省グラウンド等と和田堀公園・善福寺川公園につながる地域の要に位置する三井グランドは、動植物の生態系を維持する上でも貴重な緑地であった。また周辺住民4万余人の広域避難場所でもあり、古くから地域住民に愛されてきた憩いの場所でもあった。
(2)2003年暮れに、三井不動産によるグラウンドの閉鎖、高層マンション開発計画が公表されたことから、住民の間でグラウンドの存続・マンション開発反対の声が上がり、数度にわたる杉並区・区議会、東京都、三井不動産に対する陳情・請願・要請署名運動、公園化の要請交渉、住民主体の地区計画の策定・提出など、「三井グランドと森を守る会」を結成して、精力的な運動が展開された。しかし、三井不動産は、頑なに交渉を拒否し、東京都と杉並区を抱き込んで、一人地区計画という手法を使い、二つの区画整理事業を一体のものとして処理するという違法な処分によって、高度制限や容積率緩和を手にして、2005年に周辺の倍の6階建てのマンション開発を着工した。
(3)三井グランドと森を守る会では、土地区画整理事業認可・工事着工という事態をふまえ、2006年5月、土地区画整理事業認可取消を求めて、杉並区・東京都を相手取って、60名(一次原告52名、二次原告8名)の原告団で東京地裁に提訴した。後に付帯して、工事車輌の通過に関わる特殊車輌通行認可取消の訴えも併訴するが、この裁判は、ここ浜田山のマンション開発の是非にとどまらず、こんにちにおける都市の緑地のあり方を本格的に問う裁判である。東京地裁は、行政訴訟における原告適格の拡大という時代の流れに逆行し、広域避難場所をめぐる問題を除いては、不当にも原告適格を認めず、2008年5月、訴えを却下(一部棄却)した。私たち原告団はただちに東京高裁に控訴、現在審理中である。
3.当該番組と局の対応に対する私たちの意見
(1)当該番組は、その冒頭から「人気の井の頭線沿線を揺るがす 大事件勃発」と、現在三井不動産が建設中のパークシティ浜田山の宣伝番組とも受け取れる、通常の感覚を持ったものにとって違和感を持たざるをえないものであった。30位までのランキングのトップに位置づけ、番組の最後に冒頭の「大事件勃発」を繰り返し、ゲストのメンバーの「住みたいーっ!」という場面をアップで流し、コマーシャルまがいの番組となった。
ナレーションは「浜田駅にすぐ近く、かつて三井浜田山グランドがあった緑に包まれた」「来年9棟のマンションと39区画の住宅が出現します」「2000本の木々に囲まれ、あこがれの都市空間 第1位、パークシティ浜田山」とし、「来年3月から順次入居を開始します」「敷地内には公園や共同の施設が充実、クラブハウスにはくつろげるラウンジとフィットネスセンター、ソーシャルハウスにはツータイプのゲストルームとビリヤードが楽しめる極めつけのサロン」と紹介。「9棟のうちABC棟はすでに6割が販売済み、現在DE棟を販売中」「1LDKに書斎と納戸がついた105平方メートルのこのタイプで1億5,500万円。マンション全体の最高額の物件は204平方メートル、4億円」と販売状況や価格まで丁寧に流し、最後は「緑豊かな未来シティ いかがですか」と勧誘して締めくくったものである。これは、娯楽番組とはいえ、紹介の域を超え、宣伝・勧誘を意図したものといわざるをえず、放送の社会的使命を逸脱したものであること。
(2)私たちの質問に対して、テレビ東京は、「浜田山を取材する過程において、『パークシテイ浜田山が来春完成するとの情報を入手』し、『都内でも有数の大規模開発物件であり、その完成に伴い、浜田山という街の魅力がさらに増すだろうと判断』し、本件番組を構成することと致しました」としているが、その反面での街の変化についてはなんら触れようとしていない。当該マンション開発によって、この地域から大規模な緑地が消滅し、16メートル幅の都市計画道路と第一種低層地域に6階建ての孤島が出現、2000人の人口と700台の自家用車が一挙に増え、交通渋滞や事故の危険の増大、震災時の避難場所の狭隘化が進み、街の住環境が一変することは明らかであり、取材する過程で、当然得られる情報であったはずである。また、それらのことに関わって、建設に関わる用地の区画整理事業をめぐる行政訴訟(東京高裁第12民事部 平成20年(行コ)第260号 土地区画整理事業認可処分取消等請求控訴事件)で係争中の物件であることも知り得たはずである。この裁判の結果如何によっては、当該マンションの建設が事実上不可能となり、契約購入者は被害を被ることにもなりかねないものであり、これらのことを無視し、利害関係者の一方だけの取材にもとづく放送は、放送法第1条2の「真実の放送」、第3条4の「意見が対立している問題に対しては、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」に反していること。
(3)当該番組が私たちをはじめ地域住民に違和感・不信感を抱かせたのは、番組が地域での利便性や景観、各種商店、飲食店など、まったく性格の違う分野のものをランキングするという、番組制作者の恣意性の強いものであり、その第1位に「建設中で、しかも係争中のマンション」をランキングづけしたことにある。この点で、ランキングの基準の明示とあわせて、第1位にした根拠と判断を明らかにするよう求めたことに対して、局は一切触れようとせず、その姿勢は私たちの違和感・不信感をいっそう大きくするものであること。
(4)放送局が番組放送終了後に、視聴者の疑問や質問にどう対応するかは、放送内容とともに、放送倫理上の重要な問題である。今回の二度にわたるテレビ東京の回答は、私たちの疑問や質問にまともに答える姿勢のかけらもなく、はじめから「やましいことはない」「誤りはなかった」という態度を前提にしたものでしかない。私たちが再質問した事項に対して、「訂正又は取消の放送は必要ないものと考え」ているので、「質問への回答は控えさせていただく」とするに至っては、放送事業者というに及ばず、社会的責任を担っているものの資格をも疑わざるをえない。質問事項に答えた上で、問題も誤りもないとしなければならないのであって、きわめて不公正な態度といわざるをえない。このような問題点を隠蔽するようなテレビ東京の視聴者への対応は、社会的・公共的責任を負う放送局の倫理性を問われる問題であること。
4.貴委員会における審理の要請
当該番組と局の対応についての私たちの意見をご理解いただき、当該番組の企画・取材・制作・放送、そして局の視聴者への対応のすべての過程について、調査・検証・審理をいただき、放送倫理にもとづき、当該番組が放送の公平性、正確性、公平性に反する点がなかったか、ご判断を仰ぎたい。
なお、当該番組について、『週刊朝日』11月7日号に紹介記事が掲載されていますので、参考資料として添付させていただきます。また、私たちは、貴委員会の審理及び調査に、必要であれば積極的に協力させていただく用意があることを申し添えます。